「冗談とかじゃないからね。俺、本気で言ってるから」



あたしと隼人くんの距離が少し近づく。

心臓がドキドキする。



「…あたしも…」



『本気だよ』



そう言おうとした時、



コンコン



「真子ちゃん、隼人いる?」



賢一さんの声が聞こえた。

隼人くんはあたしの手をそっと離す。



「う、うん、いるよ」



あたしがそう返すと、ガチャリとドアが開く。



「隼人、風呂あいたぞ」



「わかった」



隼人くんはそう言って立ち上がる。



「真子ちゃん、勉強もほどほどにね」



「あ、はい」



賢一さんもそう心配してくれる。



「じゃあ先輩、おやすみ」



賢一さんが出て行ったあと、飲み終わったティーカップを持って部屋から出て行こうとする。



「あ、隼人くん」



思わず呼び止めてしまった。

隼人くんは振り返ってあたしを見る。



「えっと…た、楽しみにしてるから」



あたしは隼人くんにそう言った。

きっと顔は赤いに違いない。

すると隼人くんはにっこり笑って、



「うん、俺も」



そう言った。

その顔を見たらなんだか心臓がギューッとした。

最近、その意味をわかり始めた気がする。

でもまだ、気がするだけ…