「ねぇ、啓太。これ味薄いかな?」
母さんがキッチンで料理を作っている。
俺は大樹とリビングの掃除だ。
「ん?あ~もうちょっと濃い方がいいかも」
母さんの作っていたポトフの味見をする。
時間を見ればもう5時。あと1時間もすれば3人が家に来る。
「お母さん!他に拭くとこなぁい?」
大樹が雑巾を持って母さんのところに来る。
「もう大丈夫よ、お手伝いありがとうね」
母さんがそう言って大樹の頭を撫でると、大樹は嬉しそうにニコニコ笑う。
そしてあっという間に1時間が過ぎた。
ピーンポーン
6時5分前、家のチャイムが鳴る。
俺の肩がビクッと上がる。
ついに来てしまった…この時が。
「はーい」
「僕も行く~!!」
母さんと大樹が玄関に向かう。
俺はソファに座ってテレビを見る。
でもその内容は頭に入ってこない。
今日は父さんは仕事だった。
参加できないのを悔しがっていたが、代われるのなら代わってほしかった。
「こんばんは~」
「3人ともいらっしゃ~い!汚い家ですがどうぞ!」
「「おじゃまします」」
真子たちの声が聞こえた。
俺はいてもたってもいられず立ち上がりソファの周りをウロウロ。
「大ちゃん、これ冷蔵庫入れといて」
「何これ?」
「プリンだよ!大ちゃん好きでしょ?」
「やった~!僕プリン大好き!!」
「あら~悪いわねぇ、ありがとね」
「い、いえ、こちらこそ今日はお招きありがとうございます」
そんな会話の声がだんだん近づいてくる。
そして…

