「3階はギリギリ燃えてなさそうだな~」
兄貴がマンションを見上げながらそう言う。
「うん、それだけは救いだよね」
兄貴が逃げるとき、通帳やら、母さんたちの遺影やら、大事なものは持ってきてくれていた。
「ねぇ、なんで俺のものこれ持ってきたの?」
俺の手の中にあるのは白いうさぎのぬいぐるみ。
あとビンに入った星の砂。
「あ~なんとなく…かな」
兄貴はハハハと笑いながら頭を掻く。
まぁ、確かに、この2つは俺の大切なものだから。
「…ありがとう。兄貴」
俺はその2つをそっとポケットにしまった。
その時、
「賢一さん!隼人くん!!」
真子先輩の声が聞こえた。
3日ぶりの先輩だ。
向こうから一生懸命走ってくる。
「隼人くんおかえり、放火だったんだって?」
真子先輩が俺を見てそう言う。
先輩は栗原が放火の犯人だとは知らないみたい。
でも、きっと教えない方がいいと思う。
もし犯人が栗原だってわかったら、またなにかと自分のせいにするかもしれない。
「うん、でも犯人捕まったみたいで良かったよ」
兄貴も犯人は知っている。
でもきっと俺が先輩に言わなかったから、兄貴も合わせてくれた。

