次の授業の為に音楽室に移動していた。



「おい隼人、お前音楽の谷口センセーと家庭科の持田センセーどっちがタイプよ?」



俺の隣を歩いている友達の健太がそう言う。

男子高生なんてこんな会話しかしない。



「ん~俺はどっちもタイプじゃないな」



そう言うと健太が俺を見て言う。



「じゃあお前のタイプってどんなやつよ?」



そう言われて頭に浮かぶのはあの時の人。

七海真子。一度しか会ってないのにな。



「そうだな~、凛々しくて、強い人がいい」



俺がそう言った時、後ろからショートの黒髪の女の人が走って俺たちを追い抜いた。

そしてその女の人はクルッと振り向く。



「真子~!早くしないと授業遅れるよー!!」



そう言った。

…真子。…まさかね。

そう思った時、



「秋!早いって!!!」



後ろからそんな声が聞こえる。

俺はバッと振り返る。

だって、この声、聞いたことがあるから。

2年前より伸びた髪をなびかせ走ってくる。

それは俺の気になる女の人。

俺には気づかず、すぐ隣を通り過ぎた。

そっか、おんなじ高校だったんだ。

俺は嬉しくてニヤける。



「お、お前どうした?なに一人でニヤけてんだよ!」



健太にそう突っ込まれた。



「別に。行こう」



そう言って俺たちも音楽室に向けて歩き出した。

でも内心俺の心は嬉しくて踊っていた。