「ふう。全く、弱いんだから」



そう言うと女の人は俺の方に向かって歩いてきた。

よく見ると制服だ。これは…隣の霧山中学か?



「君、大丈夫?」



そう言われて俺は痛む体をグイッと起こして座った。



「…うん」



俺がそう言うと女の人は自分のポケットからハンカチを出してしゃがんで俺の口元に当てる。



「ハンカチ、よかったら使って」



女の人がそう言ってニコッと笑う。

その笑顔を見て、俺の心臓はドキッとする。

その時、



「真子~!早く帰るぞ!」



誰かがそう呼んだのが聞こえた。



「うん!今行く!!」



女の人はそう言って立ち上がった。



「喧嘩とかしちゃダメだよ?」



そう言ってもう一度俺に笑顔を向けて、走り去った。

なんだろう、さっきから俺の心臓はドキドキしてる。

こんな気持ち初めてだ。

ハンカチを口から離す。

ピンクのかわいらしいハンカチ。

よく見ると隅に名前が書いてある。



「…ま、こ」



英語で『MAKO』と書いてあった。

無事、不良グループから外れることができ、フツーの中学生活を送っていた。

けれど、俺はこの前の女の人が気になってしょうがなかった。

そして調べた。すると案外すぐに分かった。

彼女の名前は七海真子。

霧山中学の3年で空手の腕はかなり上位。

だからあんなに強かったんだって納得した。

でもそれから彼女に会うことはなく、俺は高校生になった。