「ヤァー!!」
いつものように空手道場に来て練習する。
相手の脇に手を置いて腕を掴む。
そして背負い投げをしようとした瞬間、
「っっ!!」
あたしは膝から崩れ落ちた。
「七海!!」
コーチやチームメート駆け寄ってくる。
「ご、ごめんなさ…大丈夫」
背負い投げをしようとすると、中野さんのお母さんの顔が浮かぶ。
『絶対許さないんだから!!!』そう言った顔が。
それからあたしは空手が出来なくなった。
正直やりたい。でも自分の体が自分じゃないみたいに動かなくなる。
「斉藤コーチ、今までありがとうございました」
結局3か月、頑張ったけどできなかった。
これ以上、ここにいることは辛い。
そう思ってあたしは空手をやめることにした。
「空手、やりたくなったらまた来いよ。俺がみっちりしごいてやるから!」
ハハハとコーチが笑った。
いつも通りの斉藤コーチの笑顔が嬉しかった。
「はい。その時はよろしくお願いします」
あたしもそう言って笑った。
こうして、あたしは空手から離れたのだ。

