「無理、しなくてもいいんだぞ?」



隣で斉藤コーチがそう言う。



「…ううん、大丈夫です」



コーチには廊下にいてもらい、病室のドアをノックした。

名札には『中野さと子』と書いてある。



「はい」



返事を聞いてドアを開ける。

そこには右足にギプスをした中野さんがベットの上にいた。



「あ、七海さん来てくれたんだ。ありがと」



中野さんはそう言ってニコッと笑う。

あたしはその笑顔を見て涙がでそうになった。



「中野さん、ごめ…」




「ごめんね」



あたしが謝ろうとすると、それにかぶせるかのように中野さんがそう言った。

え?と思って顔を上げる。



「…お母さんが…ごめんね」



そっか。中野さんはこの前のお母さんが学校に押し掛けたことを謝ってるんだ。



「ううん」



あたしが首を振ると、中野さんがほっとしたような顔をした。