パシンっ!!
頬を叩かれた。
一瞬なにが起きたのかわからなかった。
そしてその女の人はもう一度手を上げる。
あたしはとっさにその人の手を掴もうとした。
空手ではそう言う技があるから。
でもその時、
「おい!な、何してんだよ!!」
あたしたちのやり取りを見ていた啓太がその女の人を後ろから捕まえた。
「離しなさい!離して!あなたのせいでさと子はっ!!」
そう言われてハッとする。
中野さんの下の名前は…確かさと子。
「さと子は空手どころか走ることだってできなくなったんだから!!!」
女の人の悲鳴のような叫び声が耳に残る。
この人は、きっと中野さんのお母さん。よく見れば似てる。
「全部あんたのせいよ!あんたがさと子の人生奪ったのよ!!」
そのお母さんの言葉があたしの頭に響く。
あたしのせい?中野さんの人生を…奪ったの。
あたしは耐え切れなくなって倒れそうになる。
「真子!?しっかりしろ!」
啓太があたしを支えてくれる。
でも頭の中には中野さんのお母さんの言葉が回る。
「絶対許さないんだから!!!」
中野さんのお母さんがそう叫んだ時、
「君たち!何してるんだ!!」
先生たちが5人くらいこっちに向かってくる。
誰かが先生たちに言いに行ったんだろう。
警察沙汰まではいかなかったけど、結構な騒動だった。
そして数日後…あたしは総合病院の前にいた。

