「ちょっ!先輩!どうしたの!?」



いきなり泣きだす先輩に焦る。



「ご、ごめん、なんでもないから」



先輩はそう言って立ち上がって俺に背を向けて歩き出した。

でも俺はそんな先輩の腕を掴む。



「…なんでもないって、顔してないよ?」



「…」



黙った先輩を引っ張って、中庭のベンチに連れていく。

1時間目の授業が始まるチャイムが聞こえる。



「…別に言いたくなきゃいいけどさ」



俺はそう言いながらベンチに腰掛ける。

隣をポンポンと叩くと真子先輩も座った。



「はい」



ポケットからハンカチを取り出して先輩に渡す。



「…ありがと」



そう言って受け取る。

そしてしばらく黙っていると先輩は口を開いた。



「…隼人くん」



「ん?」



俺は先輩の方を向く。

でもやっぱりなんだか様子がおかしい。

俺の渡したハンカチをギュッと握る。