「…なんでもないって、顔してないよ?」
「…」
結局あたしは隼人くんに中庭のベンチに連れてこられた。
1時間目の授業が始まるチャイムが聞こえた。
「…別に言いたくなきゃいいけどさ」
隼人くんがベンチに座って言う。
隣をポンポンと叩いて、座ってと視線で訴える。
あたしは無言で隼人くんの隣に座った。
「はい」
そう言って隼人くんはポケットからハンカチを取り出してあたしに渡してくれた。
「…ありがと」
あたしはそれを受け取る。
隼人くんは優しい。本当にいい子。
隼人くんに迷惑かけたくない。
隼人くんまで、傷つけたくない。
隼人くんを、守りたい。
「…隼人くん」
あたしは震える手でハンカチをギュッと握りしめる。
そして口を開いた。

