「戸川…先輩」
栗原さんが目を見開いて驚いている。
他の2人も啓太を知っているみたい。
「さっさとこの場から消えろ」
啓太の今まで聞いたことのないような声が聞こえた。
あたしも身震いするほど、怖い声。
3人は逃げるようにこの場を去って行った。
「2人とも大丈夫か?」
啓太が心配そうにあたしに近づく。
「ま、真子ちゃんっくるしぃ…」
あたしの腕の中で大ちゃんがそう言った。
「あっ!大ちゃんごめん!!」
いつの間にか、大ちゃんをすごい力で抱きしめていたみたいだ。
かなり苦しかったんだろう。大ちゃんは涙目だ。
「間に合ってよかった」
啓太はそう言ってあたしと大ちゃんの頭を撫でる。
ホッとしたような顔をして。
「ありがとう、啓太。あと大ちゃんも、ありがとね」
そう言うと大ちゃんは少し悔しそうな顔をした。
「…僕が、もう少し大きくなったら…一人でも守れたのに」
そんな大ちゃんを見て、啓太は優しく笑った。
「大樹、そんな急いで大人になんなくてもいいんだぞ。ゆっくり、そして強く、お前は大人になってくんだ」
大ちゃんはコクリと頷く。
「そうだよ、大ちゃん。素敵な大人になるんだよ」
あたしも大ちゃんにそう言う。
すると大ちゃんはにっこり笑って
「うん!」
元気いっぱい返事をした。

