「いや、旅館2部屋取ってたはずたったんだけど…」
そこまで言うと、受け付けの旅館の人が俺たちに頭を下げた。
「申し訳ございません。私たちどもの手違いで、3人部屋が1つしかあいてないんです」
本当にすみませんともう一度頭を下げる旅館の人。
「どうする?真子ちゃんがここに泊まって俺たちは車の中でもいいけど…」
兄貴がそこまで言うと、真子先輩が首を傾げた。
「え?どうしてですか?3人部屋なんですよね?いいじゃないですか。3人で泊まれば」
俺と兄貴は真子先輩を見た。
絶対わかってない!俺たちは一応男だ!
で、先輩は女…俺と兄貴は顔を見合わせた。
きっと同じような顔をしているに違いない。
そうしているうちに、真子先輩は旅館の人に
「3人部屋でいいですよ」
そう言っていた。旅館の人はもう一度俺たちに謝って、部屋まで案内してくれた。
真子先輩は鈍感すぎる。
「わぁ!畳のいい匂い!!」
そう言いながら真子先輩が部屋に入る。
「先月、畳を打ち直したばかりなんですよ」
部屋まで案内してくれた女将さんが、旅館の施設の説明をしてくれる。
「ご夕飯は6時にこちらにお持ちいたしますので。それではごゆっくり」
女将さんがそう言って出て行く。
部屋には3人残された。

