「あ!先輩!一緒に帰ろ!!」
その笑顔を見てなんだかほっとする。
この前桑原さんに隼人くんの過去の話を聞いたときは、ホントに悲しかった。
あんなことがあったのに、今はこんなに笑っていて、すごいなと素直に思う。
「うん!帰ろ」
あたしもそう言って笑った。
そして2人で歩き出した。
「あ、確か去年先輩めちゃくちゃ重い荷物持ってたよね!」
そう言って隼人くんはケラケラ笑った。
「が、学習したんです!」
あたしが顔を赤くしてそう言うと隼人くんはさらに笑った。
しばらく歩いて、隼人くんはピタッと止まった。そして、
「先輩、今年もお祭り行こう?」
そう言ってあたしを見る。
でもあたしはさっき啓太に言われたことを思い出した。
「…ごめん。今年は大ちゃんに誘われちゃった」
そう言うと、隼人くんは少ししょんぼりした顔をした。
「大ちゃんって、戸川先輩の弟だよね?じゃあしょうがないね」
そしてまた歩き出した。
あたしはなんだかすごく申し訳ない気持ちになった。
本当は今年も隼人くんと行きたかった。でも、大ちゃんはまだ小さいし。
「…あ」
下を向いて歩いていると、少し前を歩いていた隼人くんが急にそう言った。
そしてくるっとあたしの方を向く。

