「よかった。…生きてる、うちに会えて」



酸素マスクをしてるから喋りにくそうだ。

俺はしゃがんでじいちゃんの目を見た。

いつの間にかこんなにしわしわになった手を両手でギュッと握った。



「お前、たち、2人と過ごした、日は、楽しかっ、た…」



そう言って微笑む。

目の前がなんだか見えにくくなったかと思ったら、頬に暖かいものが流れた。

それを見てじいちゃんが笑う。



「フッ、男、が泣くんじゃ、ないぞ」



そう言われて俺は袖でグイッと涙をぬぐう。

後ろでもきっと兄貴が泣いているだろう。時々鼻をすする音が聞こえるから。



「…じいちゃんごめん。俺、いっぱい迷惑かけた」



両親のいなくなった俺たちを快く引き取ってくれて、自分の子供のように育ててくれて、熱が出れば夜でも走り回って医者に連れてってくれた。

なのに、俺はなにか恩返しできたか?

兄貴と違って俺は迷惑ばっかりかけた。

今思うと、なんでじいちゃんがこんなになるまで気づかなかったんだろう。

自分を責めていると不意にじいちゃんが口を開いた。



「賢一も、隼人も…立派な、大人になれ」



そう言って俺の頭を撫でた。



「…あり…がと…」



そう呟いて、



ストン



俺の頭からじいちゃんの手が力なく落ちた。



「じいちゃん!?じいちゃん!!?」



「じいちゃん!死ぬな!」



俺たち兄弟は必死に呼び続けた。

でも結局じいちゃんはそのまま息を引き取った。