かわいい後輩



「ち、ちょっとなんですか!!」



玄関からいつもと違うお母さんの声が聞こえた。

それを聞いたお父さんも何か異変を感じたのか僕と兄ちゃんの腕を掴んでそっと寝室まで行った。



「いいか、何があっても絶対ここから出るな。賢一、隼人を頼んだぞ」



そう言って僕と兄ちゃんを押し入れの中に入れた。

押し入れの扉が閉まると、中は真っ暗になった。



「に、兄ちゃん怖いよ」



「しっ、静かに!父さんに言われただろ」



兄ちゃんにそう言われて僕は口をつぐんだ。

しばらくして何か物音が聞こえてきた。



「もう十分待ったぞ、さっさと金用意しろ」



低くて、ドスが聞いている声が聞こえてきた。

誰だろう?



「1週間待ってくれるって約束でしたよね!?」



お父さんの声も聞こえた。

その会話を聞いてなんとなくわかった。

借金取りの人たちだ。

そのうち、だんだん声が聞こえてこなくなったと思ったら急に誰かの叫び声がした。



「あ、あなたっ!あなたっ!!!!」



お母さんの声だ。

そして、



「邪魔だ。消せ」



そう言う男の低い声とともに、初めて聞くようなお母さんの叫び声がした。

ドサリという音も。



「お、お母さん?」



僕はそっと押し入れを開けようとした。

けれど、急に後ろにいた兄ちゃんが僕の口を自分の手で塞いだ。



「あ、開けちゃっ…だめ…」



兄ちゃんは泣いてるようだった。

どうして?なんで泣いてるの?

小1の僕には全然わからなかった。

しばらく押し入れの中に隠れていた。