「なぁ、隼人、元気で学校行ってるか?」



桑原さんがブラックコーヒーを開けながらそう聞いてきた。



「はい、元気に行ってると思いますよ?あたし学年違いますけど、可愛いくてモテモテです」



そう言うと桑原さんはゲラゲラと笑う。



「確かにあんな可愛い顔した男は滅多にいないよな!」



ゴクリとコーヒーを飲む。

そして…



「アイツが…元気に育ってくれて良かった」



ボソリとそう言った。

あたしはその言葉を逃さなかった。



「え?どういう意味ですか?」



オレンジジュースをベンチの肘掛のところに置いて桑原さんを見る。



「あっ、まじぃ。聞かなかったことにしてくれ」



そう言われたけど、気になる。

いつも元気な隼人くん。でもたまに見せる切なげな表情とかずっと気になってた。

知りたかった。でも本人には聞けなかった。



「桑原さん、教えてください!隼人くんのこと、知りたいんです」



あたしがそう言うと、桑原さんはポケットから煙草を出してライターで火をつけた。



「…話してもいいけど、いい話じゃないぞ」



そう言ってあたしを見る。



「はい、大丈夫です」



桑原さんはフーと煙草の煙を吐き出して、話し始めた。

隼人くんとの出会いを、隼人くんの過去を…。