『千咲高等学校』
ここだ…
こんなにいい名前の高校が不良校なんて地図の上からではわからないだろう。校門を見ればその荒れ様はよくわかる。
千咲の『咲』の字は、赤いスプレーで×印が書かれ横に『裂』と書き直してある。
周りも落書きだらけ。ここまで来ると下手なコントより笑える。
校内に入り、短い坂を登る。
坂の脇には桜並木が青々とした葉をこすり合わせ出迎えてくれた。
(春に来たかったなぁ…)
きっと春には坂一面。ピンク色の絨毯が敷かれたようになるのだろう。
(まぁ、こっちの桜も好きだけど)
やっぱり桜は春に見たかった。
そう思いながら周りを見る。
周りには誰もいない。
(誰もいない時間を狙って来て良かった…)
今の時刻は6:50。登校するにはかなり早い時間だ。転校生だと紹介を受けるまで、あまり生徒とは出くわしたくなかった。
事が上手く進んで少し気が晴れた。下駄箱で指定の上履きに履き替え、職員室に向かう。
パタ…パタ…
ゆっくりと校内を見ながら職員室に向かう。職員室は二階の1番西側にある。
(それにしても…。綺麗すぎない?)
校門のよごれようとは違って、校内はとても綺麗だった。ゴミが落ちていないとかではなく、校舎そのものが真新しいもののようだった。
(もっと汚ったないのをイメージしてたんだけどなぁ…)
階段を上り職員室の前へ来た。
