**宝石姫と狼王子**

『それより、前に銀狼に気に入られたとか言ってたでしょ。あれ、どうして?』


それを見ると、千鶴は突然の質問に驚いたのか目を見開いた。が、すぐにイスにもたれていた体を起こし、話し始める。


「…彼方って腕試しのやつ知ってるか?」


『もちろん。私もされたよ』


私の答えに「…あの時のか…。悪い。助けてやれなくて」と千鶴は悔しそうに謝った。


『いいよ。全然なんともなかったし』


私の答えに少しキョトンとして「…さすが」と千鶴は笑って見せた。


それからモゴモゴと言いにくそうに、

「私もそれ受けてさ、桜井夕ってあのほら、女みたいに可愛いやつ。…気絶させてしまいましてー…」


かなり申し訳なさそうな顔をしてうつむいた。


「殴られそうになって、反射で…つい……」


殴った…と。


女といっても、さすがNo.2の総長。No.1の幹部だろうと敵わない訳ね…。


「そしたら、お前強いなーって言われて。族に入ってんのかーって」


あぁ、それでバレたのか…。