**宝石姫と狼王子**

「お姉ちゃんこれすっごい美味しい!」


晩ご飯は凪咲の好きなカレーにした。凪咲は顔を輝かせてそれを頬張る。


「美味しいぃ!お姉ちゃんのカレーがこれからいつでも食べれるなんて幸せ〜」


大袈裟に言ってえへへと笑う彼女は、普段いくら大人っぽく振舞っていても中学生らしく可愛らしい。


「……お姉ちゃん」


しばらく夢中でカレーを頬張っていた凪咲はスプーンを置き、急に真剣な口調になった。


「どうして急にあんな不良が行くような高校に転校したの?お姉ちゃん今まで成績もすっごい良かったから、私どうしてか…わからないの…」


不安そうな顔でそう言ってうつむいた。


『グレたわけじゃないから大丈夫』


そう書いて見せると、凪咲は不安さをさらに深くした。


「じゃあ、どうして…」


『千鶴からのSOSに答えただけだよ。』


それを見て凪咲は目を見開いた。


「千鶴さんに何かあったの…?」


中学の頃から私と千鶴とはずっと一緒にいたから、凪咲は千鶴の事をよく知っている。


『詳しくはわからない。でも、今日会ったら男装してた。』


それを見て凪咲は大きな目をさらに大きくし、すぐに困った様な表情になった。


「うーん…。詳しくはわからないけど、なんとなく大変そうなのはわかった」


そう言ってしばらく考え込むと、何かをひらめいた様に身を乗り出して


「千鶴さんもここに住んでもらおう!」


そう大きな声で言った。


え。


「だってだって!学校じゃあ、まともに話せないんだろうし!ここなら話しやすいでしょ?それに千鶴さん一人暮らしで大変そうだし!!」


言ってる事はわかるが、急すぎる。
空いてる部屋も掃除が終わっていない。


「掃除とかなら手伝うから!」


『しょうがないなぁ』


しばらく悩んで、私はうなずいた。


「やった!!」


凪咲は小さくガッツポーズをしていた。