*＊宝石姫と狼王子＊*

【彼方side】


家に入ると凪咲は申し訳なさそうな顔で呟いた。


「お姉ちゃんさっきはごめん…。お姉ちゃんの友達に変な態度取っちゃって…。」


凪咲は真面目な性格だから、些細な事もとても気になるよう。


『大丈夫だよ。友達でもない。』


そう言って頭を撫でると恥ずかしそうにうつむいて「そっか…」と呟いた。


「あ、私の荷物どこに運べばいい？」


そう言って廊下の隅にあるいくつかのダンボールを指差した。


私は自分の部屋の向かいの部屋に行くよう凪咲に指示をした。凪咲は「わかった」と言ってダンボールを一つ持って部屋へ向かった。


凪咲はここに今日引っ越してきた。私が学校を出た数分後にここへ到着したらしい。午前中に荷物を全て運び、午後に転校先の学校へ手続きに向かったらしい。


凪咲は私の実の妹ではなく、私の叔父の娘、つまりはいとこだ。


この家は私の家族が生きていた頃に住んでいた家。そこをシェアハウスとして使えるように多少のリフォームをした。


凪咲はその住人第2号。1号はもちろん私。というか大家。


転校先の中学校に近いこの家が、とても都合がいいものだったため、今日引っ越してきた。


「お姉ちゃん！お部屋すごく広くて綺麗‼︎あんなに素敵なお部屋、本当に使っていいの？」


バタバタと階段を駆け下りて息を切らして聞いてくる。新しい部屋は凪咲に気に入ってもらえたようでよかった。


『いいよ好きに使って』


「〜っ！ありがとうお姉ちゃん！大好き‼︎」


そう言う凪咲の部屋に私もダンボールを持っていくのを手伝い、夕飯を作って凪咲と一緒に食べた。