**宝石姫と狼王子**

ガラッ


教室の戸を開けると武虎、そして転校生が立っていた。


「「「……っ」」」


全員が一瞬にして目を奪われた。


綺麗すぎる。そんな印象だった。


さらりとした艶のある黒髪。長いまつ毛。白い肌。


彼女の全てが綺麗すぎて、逆に気味の悪さすら感じる。


彼女の視線が俺らを捉えた瞬間に、背筋が凍りつくような感覚に襲われる。


俺はその感覚を小さい頃、二度経験したことがあるのを覚えてる。


今ので三度目だ。


深く飲み込まれてしまいそうで、俺はずっと顔を伏せていた。


それぞれが自己紹介をする。こういう時俺はいつも何も言わない。メンバーの1人が代わりに言うシステム。


今日ばかりはこのシステムをありがたく思った。


でも、このままじゃいけない。


「…待て」


帰ろうとする彼女を呼び止め、作戦に移る。


でも彼女は、要が机を蹴っても、夕が殴りかかっても動揺の色が全く見られない。


俺たちは完全にお手上げ状態だった。


少しでも情報が欲しかったから、帰りは家まで送ることにした。