**宝石姫と狼王子**

放課後。いつもの様に屋上で集まり、転校生が来るのを待った。


「相手は女の子なんだし、僕らが行ってあげようよ〜」


夕が口を開く。ただの気まぐれなのはなんとなく見て取れる。


「まぁまぁ、早く帰りたいのはわかるけどねぇ〜」


要はただ帰りたいだけだろう。眠そうにそう答える要に夕が「違うよっ‼︎」と怒鳴った。


「智也はいいけど〜。何より、虎ちゃんは見たのに僕らがまだってのが不満〜!」


夕が足をバタバタさせて駄々をこねる。


「もう虎に連絡してこっちから行く様にしよっか」


要はスマホを取り出し虎にメッセージを送った。


夕が要のスマホ画面を見てギョッとし呟いた。


「げっ!まーた女の子の連絡先増えてる〜!要いつか刺されちゃうよ〜??」


要は女遊びが激しい。顔が整っているから向こうから寄ってくる。それを取っ替え引っ替え相手している、いわば遊び人だ。


「だーいじょーぶ!この子達はそう言う重い感じのじゃないから〜。本気じゃないよー」


「要が本気の恋とかしたら面白そーだよねー」


「ありえないけどー」と付け加える夕。そう言う自分も本気の恋なんてしなさそうだ。


「僕達5人の中の誰かがさ、本気の恋とかしたら面白そうだよねー」


ニコニコ言う夕。その横で寝ていた智也がムクリと起き上がる。


「智也おはよー」


「……今何時だ?」


まだ眠いのか、髪をくしゃりと乱してあくびをした。


「5:20…って!もうこんな時間じゃん!転校生のとこ行かなきゃ!!」


夕が慌ててそう言う。


「じゃあ行こうか」


要もダルそうに腰をあげる。


智也を無理矢理起こして俺たちは転校生の教室に向かった。