夏時計



ヤバい!
ヤバいだろっ!

バカみたいに慌てる僕に彼女はくすり、と笑ってみせた。




そんな笑顔が、僕の心をたちまちさらってゆく。


何か話さなきゃ、そう思っているうちに
彼女は自販機の前に座り込むと

「やっぱ、無糖だよね。」

呟いてホットコーヒーを出口から取り出した。



「間違えちゃったんでしょ?本当は冷たいのが飲みたかったのに。」

「…え、あぁ!うん!そうなんだ!あはは!」

急に話を振られて僕は照れ隠しに笑いながら頭を掻いてみる。

そんな僕の様子に笑った彼女はプルタブを開けてごくり、とコーヒーを飲み込んだ。



彼女の、細い首の真ん中にある喉が小さく上下する。

僕はただ、その横顔を見つめていた。