夏時計



シン、と静まった館内で彼女の啜り泣く声だけが響く。


僕はそんな彼女を見つめてゆっくりと尋ねた。





「……君は、誰?」


深羽は6年前に死んだ。

電車に轢かれて。




ならば、今僕の目の前に居る君は?





涙を拭いた彼女は、僕に視線を上げて小さく呟いた。





「…私は、深夏。深い夏と書いて、みか。」







―『私は……深羽。』


―『深羽……。綺麗な名前だね。』


―『……うん。私も気に入ってる。』



その瞬間
全ての記憶が繋がった。




「……ごめんなさい。深羽、だなんて…嘘をついて…。でも、」


そうか。
そうゆう事だったんだ。


「私は、姉の為にあの絵を完成させたかった。深羽、として描きたかったの。」



僕が恋をしたのは


深羽と名乗る、君。





深夏だったんだ。