夏時計



静まり返る美術館で
大窓から差し込む日の光が彼女の横顔を照らし出す。

あの時と変わらず、彼女は美しくて。



僕の鼓動が、小さく鳴り響いた。




「実はね、あの絵、私の姉が書いた物なの。」

「え?」

突然吐かれた彼女の言葉に僕は間抜けな返事を返す。




……姉?


話の意図が読めない。


きょとん、と彼女の横顔を見つめていると
深羽はゆっくりと思い出を回想するように語り始めた。



「だけど姉は途中で描けなくなってしまったの。だから、続きを私が描いた。」

僕は懸命に彼女の言葉を飲み込んでゆく。



「姉が描きたかった風景を、どうしても最後まで完成させてあげたかったの。」


……ちょっと待て。


「姉は、あの絵を完成させる6年前に死んでしまったから…。」


じゃあ、君は?


「あの風景を、この目で見て、描いてあげたかったの。」



―――君は、誰?