夏時計




僕の視線の先に居たのは紛れもなく、彼女で。



柔らかそうな栗色の髪。

黒目がちの大きな瞳に薄いピンクの唇。

あの時の幼さは消えているものの、所々面影が残っている。




そして―――…



「……禅…?」

あの、透き通るような声も昔と何ら変わっていなかった。




――やっぱり、彼女は僕の心の中だけじゃなく

ちゃんと、存在していたんだ。









………………


「……あの絵、見たんだね。」

場所を移動して休憩所に着いた深羽が、神妙な面持ちで口を開く。



「…あぁ。」

そう返事をしたものの、僕の頭の中は相変わらず混乱してる。


そりゃそうだ。


何度も『深羽は死んだんだ』と自分に言い聞かせて生きてきたのに

今実際に彼女は僕の目の前に居るんだから。