あっちぃー。
子供たちと分かれた僕は館内にある休憩所に向かい、自販機の前で財布を取り出した。
チャリン、と吸い込まれていく小銭を確認すると冷たいコーヒーに指先を向ける。
「…やっぱ、無糖は飲めねーな。」
ふっと笑って、カフェオレを押した。
――あの夏。
僕はまだ、彼女が幽霊だったなんて信じられなくて、図書館であらゆる新聞を見て回った。
深羽が本当にこの世に居ないんだという事を
ちゃんとこの目で確認したかったのだ。
だけど神様はどこまでも僕に残酷で。
1992年8月18日
午後17時35分頃、〇×町に住む、藤咲深羽さん(16)がホームに入ってきた電車に轢かれて死亡。
深羽さんはホーム下に落ちた絵の具を拾おうと………
『…嘘、だろ……?』
新聞に書かれた日付は6年前の昨日。
深羽と僕が出会った時、彼女は6年前に既に死んでいたのだ。

