夏時計



マーシーが言った最寄りの駅とはあの無人駅。

深羽と僕がいつも話している駅の事だった。



「どうやら何年か前、あそこの駅で人身事故あったらしいよ!で、夜な夜なあの駅を彷徨ってるとか。」

「……は?」

人身事故?



マーシーの言葉に思わず食べる手を止めると、つまようじから滑り落ちたタコ焼きが階段に転がった。



「まぁ、俺も姉ちゃんから聞いたからよくわかんねぇーけど、俺らと歳変わらない女の子だったらしいぜ?」

な?怖いだろ!?と同意を求めてきたマーシーは更に続けて口を開く。




「しかもー、夏休みのコンクールに出す絵を描いてて、ホームの下に落ちた絵の具を拾おうとしたらちょうど電車が来て……っおい!」

僕はマーシーの話が終わる前にタコ焼きを投げるように置いて階段を降り始めた。