「そう言えばさ、」
と、口を開いたマーシーは先程までの憂鬱はどこへ行ってしまったのやら、ニヤリと口元を上げてひっそりと耳打ちしてきた。
「俺、超怖い話、姉ちゃんから聞いたんだけど。」
「んだよ、今度は怪談話か?暇な奴。」
僕は呆れ気味に溜め息をついて、タコ焼きをまた一つ頬張った。
「つれないなぁ、禅は。でもでも!これを聞いたらお前だって絶対ビビるって!」
「何だよ、だったらさっさと話せ。」
この暑苦しい熱帯夜に、マーシーのむさ苦しさときたら夏の部室を思い出す。
モヤっとした空気に、リンゴ飴をブンブン振り回したマーシーはわざとらしく声色を変えて話を始めた。
「ほら、俺らの最寄り駅あるじゃん。」
「あぁ、それが?」
僕は視線をタコ焼きに落としたまま返事をする。

