夏時計



――祭り太鼓が闇夜に溶けてゆく。

浴衣姿の女の子が座り込んで懸命に金魚を捕まえようとしていて。

そこから視線を横に向ければ、綿菓子を頬張った小さな男の子が、お父さんに肩車をされながらきゃっきゃと声を上げて笑っていた。



「あーぁ~…マリちゃ~ん…。」

そんな中、隣から聞こえた弱々しい声に溜め息をつきながら視線を向けた僕。



「何でよりによって禅と祭り来なきゃいけねぇんだよぉ。」

「それは、こっちの台詞だ。」

リンゴ飴をかじるマーシーを横切って境内の階段を登ってゆく。



どうやらマーシーは見事にフラれたらしい。

いや、正確には祭りは友達と行くからとマリちゃんに言われただけで実際まだフラれた訳じゃないんだけど。

マーシー的にはフラれたと感じてしまったみたいだ。




無念、マーシー。