夏時計



何だかもう二度と彼女の笑顔に触れられないような、そんな不安が僕を押し潰そうとする。

飲めない無糖のコーヒーも、絵心なんか全くない僕でも、彼女の笑顔の裏に何かが隠されている事くらいわかる。




僕は彼女が、深羽が


――――好きだから。





僕の言葉に小さく首を振った彼女は

「また、会えるに決まってるじゃない。」

そう言って固く僕の手を握り締めた。




重なった深羽の手は驚く程冷たくて、だけどどこか温かい。



「絵、完成したら見せるって言ったでしょ?」

黒目がちの瞳がゆらりと揺れる。




「必ず、見せるから。」

頼りない約束。


だけど深羽の言葉に嘘は一つも見えなかった。



僕はそんな彼女に、不安定な感情を押さえながらも小さく呟く。


「うん。約束、ね。」


にっこりと微笑んだ彼女の笑顔に、二人の小指が絡まった。