夏時計



夏の終わりはいつだって切なかった。

まるで彼女のように、儚くて。



だからこそ、全てが美しいのかもしれない。


夜空に咲く花火も、朝焼けに揺れる海原も、真っ直ぐ太陽を目指す向日葵も。

全てが、彼女に重なって見える。



そのくらい、深羽の笑顔は美しかった。



「私、禅と会えてよかった。」


手を後ろに組んだ彼女はゆっくりと、僕に歩み寄る。

そして僕の目の前まで近付くと、その白くて華奢な手の平を差し出した。




「受験、頑張ってね。」

僕と深羽の間に今にも折れそうな彼女の手が浮かぶ。


まるで別れを惜しむようなその手に自分の手の平を差し出した僕は

「…もう、会えないの?」

震える声で彼女を見つめる。