どんっ
鈍い音がして私の肩と男の人の腕がぶつかった
その拍子に相手の人が持っていた教科書は
見事に床に散らばった

「すみません!私の不注意で!」
「ああ..いいよ」

彼は教科書を拾おうとしゃがんだ私に
低く声をかけた

「でもっ「いいから、俺のせいで先生に怒られたら嫌だし」

何て冷たく言葉を発する人なんだろう
初めはそう思った

「一果遅れちゃう!」
「ごめん、今行く!」

樹里に急かされて
私は何かお詫びをしなければと思い
彼に声をかけた

「あの。何かお詫びをしたいのですが。」
「私は看護学部1年西畑一果です」

彼は一瞬驚いたように目を見開いた
でも何事もなかったように

「医学部1年芹沢蓮太」

私は彼に感謝すべきなのか恨むべきなのか
未だに分からない

「芹沢くん、授業終わったら講堂に来て?」
「ああ。分かったよ」

そう言って私と樹里は教室に急いだ