花城はその時、藤堂と友達になろう決めた。なんとなく面白いやつだと思ったのだ。

 藤堂は話してみれば意外に明るく聡明な性格だったため、すぐに親しみが沸いた。

 そして時が過ぎ、二人が高校生になってしばらくしたある日のことだった。花城は久しぶりに家族で買い物に行く予定だった藤堂を無理に誘って遊びに連れ出した。学校のテストが終わり、ようやく羽を伸ばして遊んでいたその時、悪夢のような不幸が藤堂に降りかかった。買い物に行っていた藤堂の両親が帰り道に事故に巻き込まれて父も母も突然帰らぬ人となったのだ。

 その買い物というのも、今まで友達のいなかった自分たちの息子と仲良くしてくれているからと、花城にちょっとしたお礼のプレゼントを買うためのものだったのだ。それを聞いた花城は、自分が藤堂と仲良くしていなければ、遊びに誘わなければと強烈な罪悪感に胸が引き裂かれそうになった。

 ――響也、自分を責めないでよ。僕がこうして生きているのは響也が僕を誘ってくれたからじゃないか。

 家族をいっぺんに失い、悲しみに暮れる藤堂だったが取り乱すこともなく花城を責めることもなかった。いたたまれなくなった花城は道場へ駆け込み、大きな八重桜の木の下で声をあげて泣いた。号泣して涙も渇れたその時、自分をじっと見つめる少女と遭遇した。

 ――お兄ちゃん。どうして泣いてるの?