「花城さんも私に同じようなこと言って謝ってきました。総支配人として従業員のいざこざに気づけなかったと言って……」

「え? 響也が?」

 下げていた頭を上げ、不意に変わった藤堂の口調にどきりとする。彼が花城を“響也”と呼ぶのを初めて耳にした。

「それは彼の悪い癖ですね。なんでもかんでも自分のせいだって思い込んで、私の両親が死んだ時だって……あ、いえ、すみません。今のは忘れてください」

 勢いで突いて出てしまった言葉を慌てて蓋をするように藤堂が言葉を濁すが、はっきりと聞こえてしまった。

「藤堂さんのご両親が亡くなった時……って?」

 聞き返すと、藤堂は笑顔もなくしばらく口を結んで押し黙っていた。

「……すみません。失言でした」

 遠回しに「聞かなかったことにして欲しい」と言われといるようだった。きっと他人が触れていいことではないのだ。そう思うと、それ以上同じことを尋ねることができなかった。

 その時、重苦しくなってしまった雰囲気を変えるように、楽し気に笑う子どもの声が聞こえてきた。視線の先には男の子と女の子がふたりで一生懸命砂山を作っている姿が見える。