不意にそんなとんでもないことを 口にした楓に、呆気をとられた。 「どこが……幸せなのよ」 苛立ちさえ覚えた。 私達はこんなに恵まれていないのに。 息を吐くように簡単に、 "幸せだ"なんて………。 「どこもかしこも、全部」 「意味わかんない…… そんなわけないじゃない」 「馬鹿だなぁ……美桜は」 月明かりに濡れた髪が光る。 逆光で見えなかったけど、 きっと君はまた笑ったんだろう。