私が居なくなれば
皆幸せになれるって思ってた。

あの頃とはもう違う。




どうしても生きてほしい人が居る。



あんなに生きたがっている楓が
連れていかれてしまって、

あんなに死にたがっていた私を
生かしておくなんて変だ。



私は深く息を吐いて、
緑色のフェンスに手をかけた。





その時だった。





バンッ と大きな音を立てて、
背後の扉が勢いよく開いた。


肩で息をする、よく知った顔。




「………なにしてんだよ」



翔琉くんは、
いつもよりうんと低い声で
目を合わせずにそう言った。