あと、二時間。
ただいま、補習中。



楓に会えるまで、三時間くらい。



楓に会うのが待ち遠しくて、
授業なんて全然頭に入らない。


急に指名されたら、
どーしよう。



そんなことを考えていると
ポケットで携帯のバイブが鳴る。



やば、先生に聞こえたかな…………?
ポケットの中だから平気かな?




机の影でこっそり画面をタップ。




【着信*翔琉くん】



翔琉くん………から?

珍しい。




と、とにかく!




私は先生に保健室に行くと
言い訳して教室を出て
人通りのない廊下の隅で
着信を受け取った。




「あっ翔琉くん?どーしたのー?」




『美桜さん!!早く…………!!』




「え…………何を?」



ピリッと電磁波のように
嫌な予感が走る。


まさか、まさか…………




『急いで……!…楓…っ楓が………っ!』





無意識に通話を切ると
衝動的に走り出した。




補習なんてもう忘れていた。






ただ、夢中で走る。







どうしよう…………どうしよう……


楓が…………………!!



嫌な未来ばかり浮かぶ。




楓に……
…もしものことがあったら…………





溢れだすのは、涙か、汗か。
もう分からなくなったけれど
払うようにして走る。



信号をシカトして
トラックにクラクションを
鳴らされながらも
夢中で走る。







お願い………………お願いだから
…………楓…………っ!