その瞬間。









楓の小さな手のひらが
微かに私の手を握り返した…………。










「楓………………………………?」












彼の大きな瞳は
何度も瞬きを繰り返して
私たちを映している。








声は掠れてしまっていたけど
酸素マスク越しだけれど、

楓が確かにそう言ったのを
私は聞いた。












"ただいま"









また、ぼろぼろと
容赦なく涙が流れてしまう。





「うん………………………っ
おかえり…………………
………………おかえり…楓っ……」







声にならない声で
何度もまた名前を呼んだ。











まるで、そこに君が居ることを
確かめるように。