──────あれから、
ママと私はドクターヘリを呼び
楓と一緒にこの病院に戻ってきた。



丸四日が経った。



楓が、意識を取り戻さない。









ここへ帰って来てから
何度も危険な状態になってる。


腎不全の末期患者が
透析治療を放棄するなんて
前代未聞の状況に
院長さん………パパは頭を抱えている。





あれから、ママともパパとも
何の話もできていないけど
二人は毎日、楓の病室に来てた。




私も、今はひまわり院に帰らずに
楓の傍に居る。






「今日で四日目やな」






隣に居るユキが
独り言のようにそう呟く。


その隣に居る翔琉くんは
泣き腫らしたような真っ赤な眼で
楓を見詰めていた。




「このまま…………脳死も
あり得るって…」





翔琉くんは
ポケットから何かを取り出した。

カードのようだ。






「なにそれ…………」


「ドナーカード」




──────え………………?







「もしもの時にって
楓から預かってた」






震える手でカードを受けとると
『提供可能な臓器』の欄には
腎臓以外の全ての臓器に
チェックがつけられていた。






「なんで………………
ドナー登録は15からじゃ……」





「うん。だからこれは
意思表示カード。
臓器提供の意思と
15の誕生日を迎えてやるって意思」





15歳まで…………生きるって…
楓の意思……………。



宣告によれば
楓は今年の4月が最期だった。


楓の誕生日は7月12日だから
15歳にはなれないだろうと
言われていたのに。



楓は、諦めてなんかいなかった。