それからは、
見ていられなかった。





お母さんは別室で美桜に暴力を奮う。
気を失うまでやりつづけて
気を失っている間に捨てる気だったんだ。


一方、なにもわからない俺は
おもちゃを与えられて
すっかり機嫌を取り戻して
笑っている。



胸が痛んだ。









最期の最期なのに
なんで今更
こんな記憶を見せてくるんだ。






───────逝けなく
なっちゃったじゃないか。











まだ伝えたい。

償いたい。








苦しいけど…………しんどいけど………
まだ生きていたい。








美桜を不幸にしたのは俺なのに
美桜はいつも俺を大切にしてくれた。
一度は「死ね」と罵ったはずなのに
生きていてと願ってくれた。
愛してくれた。


なのに
俺は美桜を泣かせてばっかだ。



幸せに、してやらないと。







だから…………………………




迫る激痛に
気が狂いそうだった。


狂う呼吸が
途絶えそうだった。




それでも、俺は帰らないといけない。










名前を呼んでくれる
君が居る。



名前を呼びたい
君が居る。







『楓…………!!』







突然に響いた声。

美桜の声だ。





帰り道がわからなくなった俺は
美桜の声のする方へ
歩いていった。










もう一度……………伝えたくて。