お邸を出て、
二時間位経っただろうか。

いつもなら、
もうとっくに山を降りてる。




だけど、この足元の悪い中
楓を背負っている状態では
まだまだ4分の1くらいだろう。



────早くしないと…………楓が………



焦る思いとは裏腹に
脚が前に進まない。


しまいには、雨まで振りだした。



「…………う……っ…………」


楓が、苦しそうに唸る。


「──頑張って…………楓
すぐだから……もうすぐだから」



ごめん、本当はまだまだだよ…………。



嘘で励ますことしか
出来ない自分が悔しかった。



そんな中、雨で濡れた枯れ葉に
足を滑らせる。



「あ……………っ!!」



気付いた時にはもう
天と地がひっくり返っていた。












崖、だったんだと思う。






土の匂いに、はっと我に帰る。







「どこ……………………?」









上を見上げると、
2メートルくらい上に
地面が削れている場所があった。


あそこから……………
落ちて来たのかな……。