目を閉じたままの楓は、
意識もないまま
不安定な呼吸を繰り返して
苦しさに顔をしかめるばかり。



────もしかして………この血
………楓が全部……吐いたの………?







「──────どうしよぉ………
き……救急車…………!」





パニックのまま携帯をとる。
だけどそこには、虚しい二文字。





『圏外』










「…………そんな…!」







どうしたらいいの………………………?

このままじゃ…………楓が………
楓が……………



─────買い物なんか行った
私のせいだぁ……。




思わず涙が溢れるけど、
すぐに拭う。




────何やってんの。

私しかいないんだから………
私が、しっかりしないと!







私は、楓の小さな身体を抱き上げた。
その軽さに、焦りが募る。






─救急車が来ないなら
こっちから行けばいい。



麓まで行けたら、
きっと携帯も繋がるはず。




───だから…………




「頑張れ、楓」







私は絶対に楓を死なせない。






そう誓って、
険しい山道を急いだ。