すると、頭上から笑い声が聞こえた。

「こっちだよ!美桜!」


そう言った楓は、
螺旋階段の踊り場で
顔だけ出して私を呼んでいる。



「上のテラスから星が見えるんだ」


「本当!?」



確かに、結構山の中で、
まわりに建物もないし
星が見えても可笑しくはないかも。


私は階段を駆けのぼって、
楓とテラスに出た。



「あれ、なに座って言うのかなぁ?」


「ぎょうざ?」


「うっわ!くだらな!」


そう言いながらも、
二人して馬鹿みたいに
大きな声で笑った。




冷たい風に髪を遊ばせて、
私たちは寄り添って
体温を分け合っていた。

圧倒的に温かい楓の身体が
私に委ねられていた。
多分、しんどいのかな……。





この家についた時から
休んで、少しは楽になったみたいだけど
やっぱり辛いものは辛いのだろう。

だけど私は何も出来ないから、
ただ少しでも楓が安心できるように
微笑むだけ。




「美桜さ……ごめんな?」




不意に、楓がそう呟いた。



「…………………なにが?」



そう訊き返したけど、
本当はなんとなくわかっていた。



「美桜が孤児院に居るの
俺のせいだもんな………」




「それは違うよ!だってママたち
出生届出してなかったんだよ?
だから………………」


最初から、
愛されてなんかいなかったんだ。

でも、それで良い。
楓が愛してくれれば
他には何も要らない。



「ずっと…………こうしてたいね」






肩を寄せあう私達は、
お互いの傷口を舐め合うことで
愛を深めていた。







盲目になる程。