「私がおぶっていくよ!」


「断る」


即答…………。


「馬鹿言ってないで、
ほら、もう見えてきたから……」


え!?

ぱっと顔をあげる。


そこに聳え立っていたのは、
なんかもう豪邸。
ひたすらに豪邸。

それもまるで映画に出てくる
洋館のような。



「え……………何?ここ?」


「亡くなったおばあちゃんが住んでた所。もう誰も使わなくなったから」


「そ、そう…………」



まさか、家出した方が
豪華な家に住めるなんて
夢にも見なかった…………!



「鍵は?」


「合鍵もってる。でも、
お母さんたちはそれを知らないよ」


「じゃあ見つからないねっ!」



その豪邸の中は、
誰も使ってないにしては綺麗だった。
でも、ちょっぴり埃っぽくて
楓は「明日掃除しようか」と
苦笑いしていた。


有り難いことに電気も通っていて、
私たちはまず順番にお風呂に入った。
私がお風呂から出てくると、
さっきまでリビングにいた楓が、
居なくなっていた。


「楓~?何処行ったの?」


もー………こんな広い家の中じゃ
私わかんないよ~。