「楓…………………!?どうかしたの?」
病室に戻ってきたお母さんが、
床に座り込んだ俺を見て
心配そうに声を掛ける。
だけどその時には既に、
驚愕は、憎しみに変わっていたんだ。
「お母さん、俺って本当に一人っ子?」
抑揚もなく言葉を吐く。
お母さんは戸惑ったが、
すぐに優しい笑顔を取り繕った。
「あ、あたりまえじゃない
楓はずっと………一人っ子よ?」
嘘だろ?
嘘だったんだろ。
「じゃあこれ、なんなんだよ!!」
俺は、手にもった写真を
お母さんに向けて見せた。
お母さんと知らない男の人に
抱かれた、生まれたばかりの子供。
後ろの掛け軸に、黒く刻まれた文字。
『命名 柏木 美桜』
1998.3.5
撮影されたのが、
美桜の誕生日なのも
お母さんの実家が"柏木"だから、
お父さんと同じようにこの男の人も
お婿さんだったこと。
この写真から、全部想像できた。
俺には姉が居たんだって。