この病院の中で楓に会えるのは
楓の病室か、テラスか、
透析室の前だった。


毎日楓に会いに来ていたから、
それ以外の場所を訪れたことはなかった。


だけど私の少し前を歩く
翔琉くんの脚は、それらの場所を
ズンズンと通り越して、
ついにちがう棟にきてしまった。


『小児病棟』と示されている。




──なんで?


訳もわからなく廊下を進んでいると、
翔琉くんが急に立ち止まり、
勢い余ってその大きな背中に
顔から突進してしまった………。


「ちょっと!急にっ………」


「見てくださいよ」


私の訴えを遮るように
翔琉くんは呟いて、
ドアが開きっぱなしの部屋を指差した。


そこは図書室のようで、
子供たちが読むような絵本が
ずらりと並んでいる。


………………………あ。


やけにたくさん集まった
子供たちの中心には、
楓の姿があった。