強引な彼との社内恋愛事情*2




翌日。


バスに乗り込むと、なぜか、隣に広重が座っていた。


「えっ?」と、驚いてしまった。だってここは田原さんの席だ。


「いやー。千花さんの隣、譲ってもらっちゃいました」


「はっ?」


「今日は一緒に回ってくれませんか?」


「なに言ってるの?広重?」


「だって、こういうときじゃないと」


足音に気づいて振り向くと、にやりと笑った田原さんがいた。パっとポケットからタバコを取り出して。


「田原さん?」


「今日くらいは優しくしてやれよ?」


「もしかして……買収されたからって、広重の肩持ちですか?」


「長いものには巻かれろ」と、タバコをぽんっと私に投げて渡した。


「これで、遠山も広重に買収されたな。今日くらいはデートしてやったら?数時間の我慢」と笑って後ろの席へと行ってしまった。


「ちょっ……田原さん?」


「契約成立ですね」と広重は笑った。


「はっ?」と言うと、乗車口から明るい声がした。水谷さんだった。