「俺、言わせてるんじゃないですよね?」
「言わせてないよ」
「もう一度、言ってよ。俺の名前」
「……嫌だ」
「言ってくださいよ」
「嫌だったら、嫌」
「千花さん、言って」
「嫌」
「お願いします」
恥ずかしいのに、根気のある甘い囁きに負けてしまいそうになる。
「か……」と言いかけたときに、スマホが鳴動した。田原さんからだった。
「わ……」
そうだった。お手洗いと言って、二次会を抜け出して来たんだった。
思わず広重と見詰め合ってしまった。
「スナックカジマヤに戻らなきゃ」
「なんすか?その聞き覚えのある店?」
「二次会の幹事を任されてさ」
なかなか切れない、田原さんからの着信。広重が私の手からスマホを奪った。
「ちょっと」
「とりあえず、封印」
そう言って、私にキスをした。



