案の定、「ひとりで水族館?」ときょとんとした顔で訊きかえされた。
「なんでもない」
「千花さん」
「なんでもないの」
「じゃあ、なんでそんな顔するの?」と、街頭の下、哀しそうな顔の広重がよく見えた。
なんで広重がそんな顔をするんだって、逆に言いたくなった。
「広重にはわからないよ」
「えっ?」
「私の気持ちも、村上くんの気持ちもわからないよ」
「なに言ってんですか?なんで村上がでてくるんですか?」
「だって……広重みたいな人にはわからないじゃない」
「どういうこと?なにが?」
「広重みたいに簡単に人を誘えたり、番号聞けちゃうような人には、理解出来ないの」
「なにそれ?」
私が男だったら、たぶん、水谷さんに番号なんて聞けないだろうし。
夜の散歩に連れ出すこともできないだろう。
広重は、そんなこと簡単に出来るんだ。
断られるとか、恐いとか。そんなこと、きっと考えない。簡単に出来るんだ。



